【司法試験予備試験】R4短答解説(民事訴訟法)

問31

法人でない社団等の当事者能力(29)

ア○ 原告団体は、当事者能力、当事者適格を有し、判決の効力は構成員全員に及ぶ。

イ× 固定資産ないし基本財産を有することは不可欠の要素ではない。

ウ× 実質的には当該社団が有しているとみるのが

事の実態に即していることに鑑みると、当該社団が、当事者として不動産の登記に関する訴訟を追行し、判決を受けることを認めるのが、簡明であり、関係者の意識にも合致している。

エ○ 団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にも関わらず団体そのものが存続し、その組織によって、代表の方法、総会の運営、財産の管理、その他団体としての主要な点が確定しているものは、「権利能力なき社団」にあたるといえる。

オ○ 民法上の組合に29条が適用されるかについて、判例は肯定説を採っている。


問32

1○ 「憲法32条の裁判を受ける権利とは、性質上固有の司法作用の対象となるべき純然たる訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利である。補助参加の拒否の裁判は、民事訴訟における付随手続についての裁判であり、純然たる訴訟事件についての裁判にあたるものではないから、即時抗告の申立書の副本を送達せず、反論の機会を与えることなく不利益な判断をしたことが憲法32条に違反するものではない」

2× 再度申出をすることは許されない。決定に対しては即時抗告をすることができる(44Ⅲ)

3○ 申出を不要とすると訴訟の混乱を招くことを理由に、当然の補助参加関係を否定している。

4○ 「Zの損害賠償責任が認められれば、YはXに対しZと各自損害を賠償すれば足りることとなり、自ら損害を賠償したときはZに対し求償し得ることになるのであるから、Yは、本件訴訟において、Xの敗訴を防ぎ、ZのXに対する損害賠償責任が認められる結果を得ることに利益を有するということができ、そのために自己に対する第一審判決について控訴しないときは、第一審において相手方であったXに補助参加することも許されると解するのが相当である」

5× 補助参加人は従属的地位にあるため、被参加人のなし得ない行為はもはやできない(45Ⅰ但書)


問33

既判力(114)

ア× 口頭弁論終結後の新事由がない限り、既判力に抵触する。

イ× 「既判力に抵触し」という書き方が適切でないため、バツになる。限定承認の存在及び効力は訴訟物ではないため、既判力は生じない。しかし、訴訟物に準ずるものであるとして、また、判決主文に明示されること等を踏まえて、「限定承認の存在及び効力についても、“既判力に準じた効力”が及ぶため許されない」とする。

ウ○ 判例の立場では、訴訟物は一部請求部分に限定され、請求されていない残部には既判力が及ばないとする。したがって、後訴の残部請求は既判力に抵触しない。

エ× 前訴の所有権の存否に関する判断は理由中の判断に過ぎないため、既判力に抵触しない。

オ○ 反対債権の額が請求債権の額を上回る場合は、相殺に供した金額についてのみ既判力が生じ、残額については既判力が生じないので、後訴において、残額が存在しないとする判決も許される。また、前訴基準時前に消滅していたという事実は理由中の判断なので、前訴の既判力に抵触しない。


問34

1× 原告が、かかる確認を求めることにつき法律上の利益を有する時は、適法である。

2× ある財産が遺産に属することの確認の訴えは、判決の確定後に、遺産分割や遺産の帰属に関する争いを防ぎ、解決を図ることができるため、訴えの利益が認められる。

3○ 具体的相続分は、それ自体を実体法上の権利関係ということはできず、遺産の分割や遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、それのみを別個独立に判決によって確認することが、紛争の直接かつ抜本的な解決に適切かつ必要であるとはいえない。

4○ 受遺者が先に死亡した場合、遺贈の効力を生じなくなることを理由とする。

5× 「相続人の地位を有するか否かを既判力をもって確定することにより、遺産分割審判の手続等に関する紛議の発生を防止し、共同相続人間の紛争解決に資するため、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するものというべきである」


問35

ア× 特定の筆界を明示する必要はない。

イ○ 処分権主義が妥当しないため、不利益変更禁止の原則は適用されない。

ウ○ 当事者間の合意は裁判所を拘束しない。境界は客観的に固有のものであるから、当事者の合意によって決まるものではない。

エ× 境界に争いがある隣地所有者同士という関係に変わりはないため。

オ○ 要件事実が存在しないため、真偽不明はあり得ない。職権に基づいて何らかの境界線を定める必要がある。


問36

二重起訴の禁止(142)

ア○ 重複する訴えでないかどうかは職権調査事項である。

イ○ 「審理の重複や債権の一部と残部とで異なる判決がなされることによる判断の抵触の問題があるとしつつも、相殺の抗弁は訴えの提起と異なり、相手方の提訴を契機として防御の手段として提出されるものであり、相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるとの理由」から。

ウ○ 本訴における土地の所有権の帰属は審判対象ではなく、理由中の判断であるから、二重起訴にはあたらない。

エ× 審理の重複による無駄を避けるためと、複数の判決で矛盾した判断がされることを防ぐ142条の趣旨が、妥当するため。※別訴先行型

オ× 上訴でその取り消しを求めることができるが、再審事由ではないので、確定後は違法を争うことはできない。


問37

1× 請求の原因を変更する場合は、被告の防御権を害することにならないため、相手方の同意の有無に関わらず許される。したがって、書面は必要ない。

2× そのような規定はない。

3× 「著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときはこの限りでない」(143Ⅰ但書)この規定は公益のためであり、同意の有無は問題にならない。

4○ 「相手方の陳述した事実に基づいて訴えの変更をする場合には、請求の基礎に変更があるときでも、相手方の同意の有無にかかわらず、訴えの変更は許されると解すべきであり、“相手方の陳述した事実”には、いわゆる積極否認の内容となる間接事実も含まれると解すべきである」

5× 第一審の口頭弁論終結後でも、控訴審で口頭弁論が開かれれば、訴えの変更が認められることがある(301Ⅰ)


問38

ア× 「原告又は被告が」(158)

イ○ 「判決の言い渡しは当事者が在廷しない場合においてもすることができる」(251Ⅱ)

ウ○ 当事者の争う意思を推認できないため(159Ⅲ但書)

エ○ 「証拠調べは当事者双方が期日に出頭しない場合においてもすることができる」(183)

オ× 訴えの取り下げではなく、“控訴の”取り下げが擬制される(292Ⅱ)


問39

1○ 調査の嘱託(186)

2× 職権による証拠保全(237)当事者本人の尋問(207Ⅰ)

3○ 訴えの提起前における照会(132の2Ⅰ)

4× 文書送付の嘱託(226但書)

5× 当事者照会ができない場合に該当しない(163)


問40

1○ 証人尋問の申出(規則106)

2× 正当な理由なく出頭しない場合は、罰金等の制裁が科される(193Ⅰ)受命裁判官等による裁判所外の証人尋問は、195条各項に規定されている場合に限られる。

3○ 第一審で判決が確定したBは当事者ではなくなるため、証人尋問をすることができる。

4× 宣誓は、法定代理人の同意の趣旨にそぐわないものである。また、16才未満の宣誓は一律に禁じられている(201Ⅱ)

5○ 後に尋問される証人が影響されるのを防ぐために、退廷させるのが原則としつつ、例外を認めることができる(規則120)


問41

ア× 当事者の一方が欠席した場合、裁判長は、出頭した一方の当事者をして、当事者双方にかかる従前の口頭弁論の結果を陳述せしめることができる。

イ○ 口頭弁論の範囲等(296Ⅱ)

ウ○ 大規模訴訟等に関する特則(268)

エ○ 裁判所外における証拠調べ(185Ⅰ)

オ× 当該単独裁判官以外の裁判官は、従前の口頭弁論及び証拠調べに関与していないため、当事者は結果を陳述しなければならない(249Ⅱ)※弁論の更新


問42

判決事項(246)

1× 原告が給付判決を求めているのに、確認判決をすることは許されない。

2○ 消費貸借契約に基づく貸金返還請求権と、利息契約に基づく利息請求権は、実体法上、別個の請求権であるため、許されない。

3× 原告が損害賠償を求めていないのに、損害賠償を命ずる判決を下すことは許されない。

4○ 残代金の額を、原告の請求額より多いものと認めて引換給付判決をすることは、一部認容判決として許される。

5× 原因事実及び被侵害利益を共通にするものであるから、訴訟物は一個であり、損害の内訳について請求と異なる金額を認定しても、請求総額の範囲内であれば許される。


問43

ア× 詐欺脅迫等、明らかに刑事上罰すべき行為によって訴えの取り下げがされた場合は、338条1項5号の法意に照らし、無効であるとする。

イ○ 訴えの取り下げ(261Ⅱ)

ウ× 和解の効力を争う手段として、期日指定の申し立てによる旧訴の続行、和解無効確認の訴え、請求異議の訴えが認められており、当事者が選択できる。

エ○ 終了した訴訟は復活しない。※同一の訴えを提起しても二重起訴に当たらない。

オ× (134)「法律関係を証する書面」の真否の確定を求めるものでなければ、そもそも不適法であるから、例え相手方がその請求を認諾しても、訴訟上の効果を生じることはない。


問44

ア× 簡易裁判所における訴訟手続きでは、当事者の異議に関わらず、書面による補完を認めている(278)

イ○ 判決書の記載事項(280)

ウ○ 和解に代わる決定(275の2Ⅰ)

エ× 相手方の申し立てがある場合に限られ、職権で移送することはできない(274Ⅰ)

オ○ 簡易裁判所の裁量移送(18)


問45

ア× 控訴の提起は「第一審裁判所」にしなければならない(285、286Ⅰ)

イ× 確定遮断及び移審の効力は全請求に及ぶ。※控訴不可分の原則

ウ× 控訴の理由は控訴状の必要的記載事項ではなく、控訴理由書の提出も控訴の要件ではない(286)。したがって、上記を理由に、控訴が不適法として却下されることもない(278Ⅰ)

エ○ 控訴した原告に不利益なことが明らかであるから、不利益変更禁止の原則に違反し、許されない。

オ○ 附帯控訴(293Ⅱ)