【司法試験予備試験】R4短答解説(行政法)

問13

ア× 行政権限の根拠に関する法ではなく、行政権限行使の対象となる私人の権利自由の根拠に関しては、既存の法律に反しない限り、慣習法が認められる余地がある。

イ× 行政の組織規範は内部規律に過ぎず、国民の権利義務を制約するための法律の根拠とはならない。

ウ× 代執行の要件は、①代替的作為義務違反、②他の手段による履行確保が困難であること、③履行を放置することが著しく公益に反すること、である。(行政代執行法2)


問14

ア○ 個人タクシー免許申請の審査手続(百選Ⅰ117)

イ× 行政手続が刑事手続でないとの理由のみで、当然に31条の枠外にあると判断すべきではないが、行政手続は刑事手続と性質が異なるため、諸事情を総合考慮して決せられ、常に必ず保障の機会を与えることを必要としない(憲法百選Ⅱ109、行政百選Ⅰ116)

ウ× 「基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない」


問15

ア○ 学校施設使用許可と考慮事項の審査(百選Ⅰ73)

イ× 同一の立場に立って判断すべきものではない。後段は誤り(百選Ⅰ80)

ウ○ 水俣病の認定と裁判所の審査(百選Ⅰ78)

エ× 自らの自由意思により学校を選択したことを理由に、著しい不利益を与えることが当然に許されることにはならない(憲法百選Ⅰ41)


問16

ア○ 税務調査の要件、手続(百選Ⅰ104)

イ× 権限の行使にあたって、取得収集される証拠資料が、後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない(百選Ⅰ105)

ウ× 不審な点の有無に関わりなく許容される(百選Ⅰ107)

エ○ 実質上、刑事責任追及のための資料の収集に直接結びつく作用を一般的に有すると認めるべき場合や、実質上、直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達している場合には、令状主義、黙秘権等の憲法上の保障が及ぶべきと解される。また、国税犯則取締法は、領置権限を規定している。


問17

ア× 開示請求は「何人も」なし得る(情報公開法3)。しかし、情報公開法に基づく開示請求の対象は「行政文書」である。立法機関である国会や、司法機関である裁判所の保有する文書は対象外である(情報公開法2Ⅰ、Ⅱ)から、後段は誤り。

イ× 同意は必要ない。(情報公開法7)

ウ× 相手方の氏名等が明らかにされれば、相手方に不快感、不信感を抱かせ、友好関係あるいは信頼関係を損なうおそれがあり、ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるというべきである(百選Ⅰ34)


問18

ア○ 「条例に基づき、公文書の公開を請求して、所定の手続きにより、請求にかかる公文書を閲覧し、又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきである」

イ× 保育の実施期間が満了した場合、その後、保育園に入ることはなく、原告に利益はないため、訴えの利益は失われる。

ウ○ 放送局免許拒否処分と訴えの利益(百選Ⅰ173)


問19

ア○ 滞納処分の不可欠の前提となる徴収処分であると解される。

イ× 直接明文の規定がなくても、撤回することができる(百選Ⅰ89)

ウ○ 懲戒処分差止訴訟と義務不存在確認訴訟(百選Ⅱ207)


問20

ア○ 被告を誤った訴えの救済(行訴法15Ⅰ、Ⅴ)

イ× 「各請求の基礎となる社会的事実は一体として捉えられるべきものであって、争点も同一であるから、関連請求にあたると解するのが相当である」(百選Ⅱ186)

ウ×取消訴訟の継続中に訴えの利益が消滅した場合、損害賠償請求に変更できる。その方が経済的であり、原告の負担も減るため。

エ○ インカメラ審理(百選Ⅰ39)

文書が開示されたのと実質的に同じ事態を生じさせ、訴訟の目的を達成させてしまうことを回避するため。


問21

ア○ (土地収用法133Ⅲ)補償金額に争いがある場合、直接利害関係のある当事者間で争うのが適切なため、抗告訴訟ではなく、当事者訴訟の方が合理的であるとされる。

イ× 形式的当事者訴訟が提起された場合、裁判所は、国又は公共団体ではなく、処分、裁決をした行政庁に通知する(行訴法39)

ウ× 抗告訴訟にあたり、当事者訴訟にはあたらない(百選Ⅱ207)

エ○ (行訴法41Ⅰ、33Ⅰ)訴訟物が公法上の法律関係であることが、民事訴訟と異なる。


問22

ア2 (行訴法37の5Ⅰ)公園を使用するには、使用許可を義務付ける必要がある。

イ1 (行訴法25Ⅱ)生活保護を廃止されないため、廃止処分が執行されることを防ぐ必要がある。

ウ1 (行訴法25Ⅱ)建築確認処分がされた場合、それによって建築が可能になるという法律効果が与えられるため、その建築が執行されることを防ぐ必要がある。

エ3 (行訴法37の5Ⅱ)不利益処分により、補うことのできない損害を防止するため、これを差し止める必要がある。※侵害排除請求権


問23

ア× 「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる(国家賠償法1Ⅰ)

イ○ 「職務を行うについて」の意義(百選Ⅱ229)

ウ× 目的に沿った利用に伴い発生した危険性をも包含し、利用者以外の第三者に対するものも含む(百選Ⅱ241)


問24

ア× 上級機関から下級機関に対して、権限の委任が行われた場合、権限は下級機関に完全に移るが、上級機関としての指揮監督権は失われない。

イ○ 法定受託事務は、機関委任事務と異なり、国の事務ではなく地方公共団体の事務であり、互いに独立した行政主体間の協力関係を前提としている。

ウ× 大臣の統轄下にありつつ、組織的には、省の内部部局とは異なる独立性を有する。

エ×直接国民に影響を与えるものでない限り、処分性がないため、抗告訴訟を提起することはできない。